どーも皆さんこんにちは。ブロガーのキック(@kikumer)です。
僕は「死刑制度」について卒業論文を書いたのですが、日本の死刑制度について、ほとんどの方が知らない事実を知れたので、ちょっと記事にしておきます。
【死刑制度に関する卒論を書く予定の学生へ】
死刑制度に関してどの観点から学ぶかによりますが、死刑の本を20冊以上読んだ僕がこれは間違いないと思った著書をこの記事の最後に数冊あげておきました。すぐ確認したい人はこちらからご確認ください!
また、この記事について動画解説もしているので、音声で聞きたい方はこちらからどーぞ!
死刑制度のメリット
一般的に死刑制度について、国民がメリットと認識しているのは以下のようなものがあげられると思います。
- 犯罪の抑止力→(死刑への恐怖から重罪を犯さないようにする効果)
- 無期懲役よりも抑留期間が短いため、費用の削減ができる
- 大罪は死に値するという正義感
実際に僕も卒論で死刑制度を扱うまではそのような認識でした。
ただ、様々な文献から調べた結果、驚きの事実が判明したのでそちらをご紹介いたします。
日本の死刑制度には利点がないって知ってた!?
もうさっそく結論から、、そう。
日本の死刑制度ってメリットが全くと言っていいほどないんです。
もちろん死刑制度という問題は、決して合理性だけで必要不必要を論じることはできません。被害者の報復行動の代替など、感情面でも見ていかなければならない問題です。
しかし、合理的観点だけに絞ってみると、いかんせん日本の死刑制度には利点が見受けられないのです。
そして、さらにもう一つ問題なのは、多くの日本人がこのことを知らないということです。
僕がネット上で一般人400名にたいして行った調査によると、日本人の約8割が死刑制度に賛成の姿勢を示していることがわかったのですが、にもかかわらず、約4割の人は、日本の死刑がどのような方法で行われているかということさえ知りませんでした。
ちなみに日本は絞首刑を採用しています。
このような状態では、いくら民主主義とはいえ、国民が死刑制度を論じるにはあまりにも知識不足ではないかと思うのです。
悪いことをしたらぶち殺すべきである。
この考え方自体悪いとは言いませんが、その割には日本人はあまりにも死刑に対して無関心であるといえます。
日本の死刑制度のデメリット
なぜ、死刑制度にデメリットが多いのか、ここで具体的に解説していきます。
デメリット1.死刑に抑止効果はない
日本人の多くが死刑存置理由として掲げるのが、死刑制度の犯罪抑止力です。
しかし、現時点で死刑制度に抑止効果は確認されていません。
世界中のデータを分析した、暴力と殺人の国際比較では過去のデータを分析して、抑止力というよりはむしろ、死刑を廃止したほうが犯罪発生率が低下したという調査結果が報告されています。
一部の著書では、死刑になるほどの犯罪者、いわば精神異常者は社会が生み出した存在であり、その犯罪者の精神構造を心理学的観点から研究したほうが、長期的には犯罪抑止につながるのではないだろうか。という見解すらあります。
ちなみに、抑止力についての見解として、僕が読んだ中ではこちらの本が抑止力についての新しい見解などが対話形式で書かれている非常に読みやすく、おすすめでした。
デメリット2.死刑執行には費用がめっちゃかかる
更生の望みのない囚人を収容しているのは税金(費用)の無駄遣いである。
という声も死刑存置派の意見の代表例です。
しかし、これも事実とは全く相反しています。
実は、一人の囚人を終身刑で収監するよりも、死刑にする方が莫大な費用が掛かるんです!
一般懲役刑だと一人収監しておくのに1年で約50万円と言われています。
それに対して死刑囚はその3~4倍かかるそうです。
これは、死刑囚に対する刑は”死”自体が刑罰であるため、懲役がないので一般囚人と比べ、好待遇を受けるからだと思われます。
このほかにも以下のような理由から、死刑のほうがお金がかかると言えるそうです。
- 裁判回数が圧倒的に死刑裁判のほうが多いため、無期懲役で40年収監するより死刑囚を一人処刑する方が3~4倍も費用が掛かってくる。
- 懲役刑には刑務作業があるため、囚人も社会貢献をし、収容コストくらいは稼ぐ(刑務所の維持費になる)のに対し、死刑囚は全くそういう制度が設けられていない。
結果、圧倒的に死刑のほうが税金の無駄遣い要素が強いということになってしまうんですね。
まとめると
- 死刑制度に『懲役刑』がない(「死刑」が刑罰だから)
- 死刑裁判はかなり慎重に行われる(回数が重なるのでお金がかかる)
この2つが大きな要因なのでしょう。
ちなみに、費用のことについて、というか死刑存廃について圧倒的に情報量が多いのはこちらの著書です。死刑のことについていろんな観点から包括的に書かれています。死刑のことについて勉強するなら必読の一冊だと思います。
その他にもデメリットは多数
国際的にも日本が死刑制度を存置し続けていることに対する批判があります。
先進諸国で死刑存置国は日本と中国のみということもあり(アメリカも一部の州にはまだあるが)、欧州連合(EU)は加盟の条件として死刑制度廃止を掲げています。先進国で死刑制度を存置し続けるには少し苦しい状況になってきていることも否めません。
そのほかにも
- 冤罪になっては取り返しがつかない
- 終身刑が代替刑としてなりえる
- 刑務官の精神的苦痛
など、死刑存置によるデメリットは多数です。
ちなみにこれらもおすすめの著書を並べておきます。
死刑制度の国際事情について詳しく書かれた本
おもに日本の死刑と海外(主にアメリカ)を比較している本で、実際これは僕が卒論を書くにあたって一番重宝した著書です。
刑務官の心情や実態が詳しく綴られている本
死刑の裏事情から刑務官の思いがリアルに綴られています。
- 統計的に犯罪抑止力が認められない
- 死刑には莫大なお金(税金)がかかる
- 先進国で死刑存置国は国際的に批判を集めやすい
- 冤罪のリスク
- 刑務官の精神的苦痛など
日本人はもっと死刑について知るべき
この記事は死刑の廃止を訴えるものではありません。
死刑というものは一方向から簡単に論じることができる代物ではないからです。
ただ、日本人の「臭いものにはふたをする」精神はよくないかなと思っています。
日本の死刑制度の閉鎖性もこの問題の原因となっている点は否めませんが、それでも知ろうとすれば知れる世界です。
日本が死刑に対して高い支持を示している以上、勉強しないことは無責任であると思います。日本人がもっと死刑について知り、考えることが必要です。
ぜんぜんいつもの路線とは違った記事になりましたが、せっかく卒論でいろいろ勉強できたので、問題提起として記事にさせていただきました。
ではでは。
死刑制度で卒論書くなら読んでおいてほしい本まとめ!
死刑のある国ニッポン
死刑廃止派の森達也さんと、死刑存置派ジャーナリストの藤井誠二さんが対談する様子を描いた著書。会話形式になっていて非常に読みやすく、死刑制度について深く知らない読者にとってもとっつきやすいです。死刑存置派と廃止派の意見交換をみる読み物としては最も分かりやすい一冊ではないでしょうか。kindle版が単行本の半額以下なのでkindleで購入をお勧めします。
ゆれる死刑
アメリカと日本とでの「死刑制度」に対する捉え方の違いを分かりやすくまとめてくれた著書。アメリカは州によっても制度が違うため、非常に興味深い。卒論では一番重宝しました。
死刑のすべて
元刑務官著のこの本。死刑制度の実態、同じ日本でこんなことが起こっているのかという事実をありのまま教えてくれる本です。勉強というよりは単純に一番読んでほしい一冊!
ドキュメント死刑囚
死刑について包括的に書かれた本。実際に死刑囚と触れ合っていた著者が死刑制度の是非について考察している。死刑制度について最も幅広く学べる一冊。
死刑はこうして執行される
判決から死刑執行までどのように運ばれるか、その際の死刑囚の様子、世論の死刑制度への影響など死刑問題に一石を投じる著。死刑について考えるには良本です。
死刑囚最期の1時間
死刑囚の死刑執行前の最期の様子、心情を事細かに描いたドキュメント。日常生活からでは触れることのない死刑制度の1面を考えさせられる一冊。冤罪で死刑になった人の様子はなんとも言い難いものがある。
動画による解説はこちら!
最後に、僕の超個人的は”死刑存置派”です
これは卒論は全く関係なく、ただ個人的な話で恐縮なのですが
こういった統計を見ていくと、死刑を存置しておく必要はないと言えてしまうわけですが、超個人的な考えを言わせてもらえば、死刑はあって欲しいと思っています。
「必要」というより、「あってほしい」という個人的願望ですね。
御託をだらだら並べてもあれなので、時間がある人はこの動画みてください。
今から30年くらい前の事件ですが、とても有名な事件です。身の毛もよだつようなむごい方法で通りすがりの女子高生を拉致監禁暴行し、殺してコンクリ詰めにした少年犯罪です。
が、少年法に守られて数年で釈放。今も僕たちと同じ日本でのほほんと過ごし、再犯まで起こしています。
中にはこの時の事件の犯人だったことを自慢する言動をしていたメンバーもいたそうです。
断言しますが、こういうの人物を処分するためにも死刑はあって欲しいなと。感情抜きにすれば終身刑でいいんですけどね。まあどっちでもいいので死ぬまで社会には出さないで欲しい。
死刑問題は複雑で、ミクロの視点で見るととても必要に思うし、ただマクロの視点でみると不必要だったりするんですよね。
僕の中でも2つともとても同意できる内容で、だからこそ難しい問題なんだなと。
多分終身刑で100%出られない刑を最高刑にするのが最適解なんだとは思うんですが、難しい話だと思います。